【論点整理】老後2,000万円不足問題ー金融庁審議会資料を読み解く

今年6月一気に争点化した金融庁審議会のワーキング・グループ報告書ですが、2,000万円という数字が当初の趣旨を逸脱して一人歩きしているので、重要な点を一度整理し直してみました。

ご参考にして頂ければ幸いです。

審議会の本旨は、国民の長期的な資産形成にあった

金融審議会 「市場ワーキング・グループ」では現状認識からスタートし、不足分をつみたてNISAやiDeCo等で補っていける体制作りを進めていくことが審議会の本旨でした。

しかし、参議院選挙前に自民党批判の材料を探している野党によって、さも年金制度が崩壊しているようなトーンで受け止められてしまいました。

2,000万円の不足は、95歳まで存命シナリオがベース

報告書では、「20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になる」と記載されています。そのレンジで示されている中の最も高い数字が意図的に抜き出されてしまいました。

報告書によると、60歳のうち25%の人が95歳まで存命するとのことで、全ての高齢者に当てはまる訳ではなさそうです。

現時点の預貯金が2,000万円必要とは言っていない

凄く重要な点なのですが、毎月5万円の取り崩しが最大30年続けば2,000万円掛かると報告書には書いてありますが、現時点の預貯金が2,000万円必要とは書いてありません。

つまり、もっと少ない額の預貯金額でも、複利で運用することが出来れば30年間の不足分を埋め合わせることが出来るはずです。それでは計算してみましょう。

エクセルで計算してみると結果はこのようになります。

=PV(0.03,30,-600000,0,0)

¥11,760,265

計算式では、「年間60万円(月5万円)を使うが、年3%の複利運用で回した場合に30年後の年末に残高0になる為の現在の残高」を求めています。

3%が高いかもしれませんが、2%の運用まで下げると現時点の必要額は¥13,437,873に上昇します。

2,000万とはいかなくても、現時点で約1,200万円の預貯金があれば運用次第で無収入でも30年間の不足分を賄う事が出来ます。

報告書記載の65歳時点の金融資産の平均保有状況は無視

この報告書では、世帯別の65歳時点での金融資産の保有状況も記載されています。それによると、夫婦世帯では2,252万円、単身男性では1,552万円、単身女性では1,506万円とのこと。

つまり、現状の夫婦世帯では単純平均すると不足分を十分に補うことが出来ています。(もちろん負債を抱えている方もいるので、資産と貯蓄のネット額が本来が本来求めるべき数字ではありますが)

現在の高齢者は十分な貯えがあるので、将来の世代に向けて少しづつ積立して運用していけば恐れるに足りないことを伝えたかったのでしょうが(報告書の中のコラム「長期・積立・分散投資の有効性」からも分かります)、意図せざる方向に飛び火してしまったようです。

まとめ

思わぬ方向に飛び火してしまったこの報告書、言いたいことは良く分かるのですが、確かに配慮を欠いている部分もあると思います。

この報告書の趣旨から考えて、一定の資産のある夫婦世帯が安定的に暮らすことが出来る為の方策を念頭に置いていましたが、ばらつきの大きい貯蓄額を平均値で議論するのは少し無理があったようです。

ただこれは金融庁の公式見解ではなく、あくまで審議会の資料なので、それから更に大きな問題になるとは思えませんが、野党が参議院選挙までに他の争点を見つける事が出来なければ、ズルズルと火種がくすぶる事になりそうです。

そもそも5万円のギャップの支出の中には嗜好品や旅行など最低限の生活水準を越えるものも含まれているでしょうから、毎月5万円の取り崩しがあること自体の賛否についてもよくよく考えるべきだと思います。

《参考資料》

金融庁審議会資料 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf

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