【書評】新世界 国々の興亡 テーマは未来予測

もう8年前の新書ですが、船橋洋一氏と各界の専門家や政治家との対話をまとめた朝日新書の「新世界 国々の興亡」が本棚に残っていたので、読み返してみました。この手の本は「賞味期限切れ」が早いものですが、短期予測では無く長期予測がテーマので、参考にするべき箇所も幾つかあるので、一部を紹介しておきます。

概要

船橋洋一氏は朝日新聞の元主筆。彼と各界のストラテジスト11人との対話記事(朝日新聞に掲載)をまとめたのが同著。元々新聞記事用にまとめられているので、夫々の方との対話は10ページ程度しかありません。

章立ては以上の通り(肩書は当時)

  1. マシュー・バローズ(米国家情報評議会顧問)
  2. ローレンス・サマーズ(米国家経済会議議長)
  3. モハメド・エラリアン(ピムコCEO)
  4. ロバート・ゼーリック(世界銀行総裁)
  5. ルイーズ・アーバー(国際危機グループ理事長)
  6. アンドリュー・クレピネビッチ(米シンクタンク戦略予算評価センター所長)
  7. リー・クアンユー(シンガポール顧問相)
  8. ロバート・カプラン(新米国安全保障センター先任フェロー)
  9. アンマリー・スローター(米国務省政策企画局長)
  10. トニー・ジャット(歴史家)
  11. 王緝思(北京大学国際関係学院院長)

感想

この本は学生時代に購入したものでしたが、何で購入したのか改めて思い返してみると、対話者の1人目のバローズ氏の話が入っていたからでした。当時学生イベントのディスカッション大会のファシリテーターをしていた時に、同氏が執筆した”Global Trend 2025 -A transformed world”を熟読していました。それまでは軍事力等のハードパワーが国際関係を規定すると自分は考えていましたが、人口動態や気候変動等の長期的な(広義の)環境変化(最近話題になったキーワードで言うと「メガトレンド」)が国際情勢を大きく変えるという指摘に強く影響を与えられました。

バロー氏は船橋氏の本によると、地政未来学の第一人者。CIAでのヨーロッパ情勢分析担当を経て、なお現在は米シンクタンク大西洋評議会に在籍している模様。Youtubeには同氏のインタビューも掲載されています。

船橋氏との対話の中で、船橋氏が「(これからの)潮流に、ブラックスワン(「白鳥は白い」といったようなこれまでの前提を覆してしまう事象)はありますか?」と尋ねると、同氏は巨大な原発事故を挙げていたのは新たな発見でした。インタビューは東日本大震災の前の2010年に行われているからです。確かに、原発事故のリスクは当時から認識されていましたが、数多くあるリスクの筆頭に挙げたのは先見の明があると言えるでしょう。

また、同氏の著作がいつの間にか翻訳されていたようなので(「シフト――2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来」)、読んだら著作をご紹介したいと思います。

この手の長期予測を発表するのは、欧米系のシンクタンクや金融機関が殆ど(例ゴールドマンサックスやPWC)で、アジア・太平洋地域については彼らの核心的利益とは遠いところにある為に、予測が意外と雑だったりするもの(事実バロー氏の専門は欧州で、欧州史でPHDを保有)。そもそもこの本の対話者も、船橋氏の人的ネットワークをベースにして探した方、つまり米国の実務者がメイン。本当に欧米中心以外の味方をしている方が載っていないのがこの著作の欠点。このブログでは、本気で日本の50年後を独自予測している方をこれから探してみたい(もしくは自分で予測を策定したい)と思います。

【書評】PWCレポート”The Long View How will the global economic order change by 2050?”その1

《参考文献》

“Global Trends 2030 -Alternative worlds”

https://globaltrends2030.files.wordpress.com/2012/11/global-trends-2030-november2012.pdf

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