【書評】PWCレポート”The Long View How will the global economic order change by 2050?”その1

前回の習近平氏の「習近平 国政運営を語る」で2049年という年の歴史的意義について少し触れたので、話を転じて大手会計事務所PWC(プライスウォーターハウスクパース)が2017年2月に発表したレポート”The Long View How will the global economic order change by 2050?”(長期的な経済展望:世界の経済秩序は2050年までにどう変化するのか?)をご紹介します。

日本語抜粋はPWCのHPに記載されていますが、英語本文を読み返して(日本語訳は無し)注目点を洗い出してみました。我々の生きている内に世界秩序が大きく変化することがよく分かります。

《前回投稿》

【書評】習近平 国政運営を語る

概要は?

2015年に発表された同社のレポート「2050年の世界 世界の経済力のシフトは続くのか?」(日本語訳あり)を更新・加筆したもの。

超長期のGDP予測レポートという観点では、米国大手投資銀行ゴールドマン・サックス(GS)が2030年までのGDP予測を行っていますが、それよりも更に長期かつ最新のレポートとなっています。(GSの将来予測については特に思い入れがあるので、別途ご紹介します)。

Key findings(レポートからそのまま抜粋)

  • 経済成長にとって好意的な政策(保護主義の長期的継続が無いことを含む)が採用される事や、世界的に文明を脅かす程の大災害が起きない事を前提にすると、2050年までに世界経済は現在の2倍の大きさになると想定
  • 新興市場は世界経済の成長エンジンであり続ける。2050年までにE7(※1)は世界のGDPに占めるシェアを約35%からほぼ50%までに拡大。中国は2050年には世界のGDPの約20%を占め、世界最大の経済大国になり、インドは2位、インドネシアは4位へと成長(購買力平価ベース)
  • 他の新興市場の多くも檜舞台に登場する。例えばメキシコは購買力平価ベースでイギリスやドイツよりも大きくなり、7大経済大国の内の6カ国が新興国になる
  • 一方で、EU加盟27カ国の世界経済に占めるシェアは10%以下に低下し、インドよりも小さくなる。
  • ベトナム、インド、バングラデシュは2050年までの期間でもっと急速に発展する経済と予想。イギリスはBrexitに伴う過渡的な影響が過ぎ去ればEU27カ国の成長スピードを上回る可能性。一方でEU主要国で最も急速に発展するのはポーランドと予想。
  • 現在の先進国は高い平均所得を維持し続けるが、新興経済は2050年迄にこの差を大きく縮めてくる。これにより、新興市場への長期投資を目指すビジネスにとって大きな機会を開拓することになる。しかし、ブラジル、ナイジェリア、トルコ等の国々で近年見られる様な嵐を乗り越える我慢強さが求められる。挙げた3カ国はいずれも分析に基づけば、なおかなりの長期的経済成長の潜在力を有している。
  • この経済成長の潜在力を実現する為には、新興市場の政府はマクロ経済の安定性を改善し、天然資源に過度に依存する経済(もし現時点でそうであれば)から多様化させ、もっと効果のあがる政治・司法組織を作り上げる為の構造改革を実施する必要がある。

※1 E7:Emerging7 中国、インド、インドネシア、ブラジル、ロシア、メキシコ、トルコの新興主要7カ国

注目点は?

  • 日本経済の規模は2050年のランキングで8位。インドネシアやブラジル、ロシア、メキシコに抜かれ去ってしまいます。購買力平価ベースでは2016年の4兆9,320億ドルから2050年には6兆7,790億ドルに34年間で37.4%伸びたに過ぎません。経済成長率の水準は世界主要国の中で最低水準。やはり人口減少が進むことが経済にも影を差しています。日本の自国通貨換算の平均成長率は0.9%で、最も高いベトナム(5.0%)とは4.1%の差があります。年わずか4%の差にすぎませんが、30年以上継続すると複利効果でとても大きなインパクトを生んできます。

 

  • 中国に続き、インドのGDPがアメリカを越える(PPPベース)。経済的には中印米の三国志時代に突入。インドの平均成長率は2050年まで中国よりも2%程高い水準を維持。3位のアメリカと4位のインドネシアとの差は3.25倍に。(下記グラフ参照)

  • 労働力人口の減少ペースはアジアの主要国では日本が最も高いが、タイや韓国も高率。ASEAN加盟国の2050年GDPは、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア、タイの順になる。タイは遂に「中進国の罠」から抜け出せないまま2050年を迎える見込。
  • 世界経済に占める中国のシェアは2030年頃に頭打ちして、緩やかな低下を始める。一方でインドは2050年までほぼ一定ペースで成長。EU27カ国やアメリカも徐々に低下(下記グラフ参照)。このレポートでは2050年以降の推計は触れられていないが、2060年以降に中印のランキングが逆転する可能性もあると思う。やはり人口動態(Demography)が中国にとって不利に働く可能性は高そう。

あまりにも注目点がありすぎるレポートでして、読んでいる内にお腹一杯になるので、続きは「その2」で記したいと思います。

【書評】PWCレポート”The Long View How will the global economic order change by 2050?”その2

《参考文献》

PWCレポート原文

https://www.pwc.com/gx/en/world-2050/assets/pwc-the-world-in-2050-full-report-feb-2017.pdf

2015年発表レポート(日本語訳)

https://www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/archive/assets/pdf/world-in-2050-february-2015.pdf

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