【書評】習近平 国政運営を語る

 

毎回中国に行くたびに「新華書店」という国営の本屋(チェーン)に立ち寄ることにしているのですが、2018年6月に観光で行った四川省・成都市のお店で見かけて購入したのが、「習近平 国政運営を語る」(120元=約2,000円)。

元々中国語で書かれた「習近平談治国理政」というスピーチ集を日本語訳したものです(中国共産党公認の公式本)。

四川省で習近平氏のスピーチ集を日本語で読む人がどれだけいるかと想像し、笑ってしまいましたが、何故か購入してしまいました。割と簡単に読破出来たので、内容をご紹介します。この本を通じて、中国の超長期戦略が見えてきました。

構成は?

分野ごとの習主席のスピーチ集になっており、計18章構成です。

  1. 中国の特色ある社会主義の堅持と発展
  2. 中華民族の偉大な復興の実現という中国の夢
  3. 改革の全面的深化
  4. 経済の持続的で健全な発展を促進する
  5. 法によって国を治める
  6. 社会主義文化強国の建設
  7. 社会事業と社会管理の改革発展
  8. エコ文明の建設
  9. 国防と軍隊の現代化推進
  10. 「一国二制度」の実践を豊かにし、祖国の統一を推進
  11. 平和的発展の道を歩む
  12. 新型大国関係構築を推進
  13. 周辺諸国との外交関係を上手に進める
  14. 発展途上国との団結・協力を強化
  15. 多国間協力に積極的に参加
  16. 党と人民大衆の結び付きを密接にする
  17. 腐敗反対・廉潔提唱の推進
  18. 党の指導レベルを向上させる

内容は?

個別のスピーチの中に日本人にとって大して興味深いものは含まれていませんが(公式スピーチ集なので仕方ないところではあります)、各スピーチを読んでいると根底にある中国の大戦略が見えてきます。スピーチの過半数の中のどこかで触れられているのが「二つの百周年の奮闘目標」という単語。日本ではあまり注目されていないキーワードだと思うので、是非紹介したいと思います。

二つの百周年とは?

中国共産党結党百周年(2021年)と中華人民共和国建国百周年(2049年)を指し、①2021年までに小康(ややゆとりある)社会の全面的実現②2049年までに富強、民主、文明、調和の社会主義現代化国家を築き上げる事を目標としています。

イマイチ分かりにくい目標なのですが、前者は具体的な目標を設定しており、2020年までにGDPと都市・農村住民一人あたりの所得を2010年の2倍にすることだそうです(今までのペースだと達成見込)。後者も特にどのような目標を指しているのかよく伝わりにくいのですが、もう一方の超大国としてアメリカに対抗出来る総合的(経済・軍事だけでなく、科学技術や芸術文化・スポーツ等も含む)国力を養い、先進国へと発展することだと読み替えました。

孫文は死の直前に「革命なお未だ成功せず」と遺したそうですが、これでついに彼らの100年革命が完結するのでしょう。

何故2049年が重要な年になるのか?

ここからが本題と言っていいでしょう。2049年は単に建国百周年の記念するべき年を意味しているだけではありません。一国二制度を導入している香港・マカオを人民共和国に編入出来る様になる(一国二制度の保証期間が終了する)のも2049年です(先に香港が2047年に二制度の保証期間が終了し、マカオは2049年)。

つまり、中華人民共和国は中華圏の失地(台湾除く)を阿片戦争以来約200年ぶりに「回収」するという悲願を達成します。それまでに台湾がどうなっているか(政治的観点から見て)流石に動向を読み切ることは出来ませんが、少なくとも経済的には中国経済の一部分として組み込まれているはずです。中国の視点から言えば、屈辱の近代史の汚点を回収し、近代史を超克する国家に変貌する歴史的な大転換点が2049年になるはずです。

まとめ

「来年の事を言うと鬼が笑う」ということわざがありますが、中国の指導者は31年後の世界戦略を見据えて着々と駒を進めています。翻って日本の政治家は極めて近視眼的な政局に惑わされている様な気がしてなりません(与党・野党を含めて)。近い内に、日本国内でも民主主義への揺り戻し(バックラッシュ)勢力が登場し、強権的な開発独裁型政治(例:シンガポール)を求める様になるかもしれません。これまで日本でも民主主義に疑問を抱く勢力はいたものの、所謂「傍流」でしたが、これからの日本では元々主流派に居た政治家や官僚、学者等の政策エリートが転向していく可能性もあり得ると思いました。

 

実はこの本には第2巻があるそうなので、次に中国に行く際には買い求めて、ご紹介しようと思います。

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