【新『李克強指数』を見つけたい】GDP発表を先取りする方法を考える

 

株式投資をやっている方にとって各種経済統計指標の中で最も重視しているのはGDP速報だと思うのですが、どうにか先取りして捉える方法はないのか、考えてみました。重要な示唆を与えてくれたのは、中国の李克強国務院総理が発言したとされる「李克強指数」でした。

李克強指数とは

先日欧州を訪れた中国の李克強国務院総理(序列2位)ですが、wikileaksによると2007年3月に東北部の遼寧省党書記としてランド・アメリカ大使と歓談した際に以下の発言を行ったとされています。

《以下、原文からそのまま引用》

4. (C) GDP figures are “man-made” and therefore unreliable, Li said. When evaluating Liaoning’s economy, he focuses on three figures: 1) electricity consumption, which was up 10 percent in Liaoning last year; 2) volume of rail cargo, which is fairly accurate because fees are charged for each unit of weight; and 3) amount of loans disbursed, which also tends to be accurate given the interest fees charged. By looking at these three figures, Li said he can measure with relative accuracy the speed of economic growth. All other figures, especially GDP statistics, are “for reference only,” he said smiling.

日本語訳

4.GDP数値は「人為的」である故に信用できない、と李氏は述べた。遼寧省の経済を評価する際には、彼は3つの数字に注目する。①昨年遼寧省では10%伸びた電力消費量、②重量に応じて料金が課金されるのでかなり正確な鉄道貨物輸送量、③利息が課されるので正確な傾向のある貸付残高。これら3つの数字を見ることで、李氏は経済成長の速度を比較的正確に計ることが出来ると述べた。他の全ての数値、特にGDP統計の様なものは「参考値に過ぎない」と彼は微笑みながら述べた。

《以上、引用終了》

この数字はあくまで2007年時点での遼寧省という重工業が基幹産業だった地域の短期的な経済成長を見る為に彼が挙げたもので、2018年の中国のGDP全体を計る為にそのまま使うのは流石に無理がありますが、重要な示唆を与えてくれます。

 

GDPを推計する時に重要なこと

  1. GDPの推計を行いたいエリアの産業を理解し、幅広い業種をカバーできる数値を掴むこと
  2. 電力や鉄道など、サービスを提供するentityの数が限られること(統計精度や発表迄の期間に影響する。つまりラーメン供給杯数の様に提供元が沢山ありすぎる数字は役に立たない)
  3. 正確な数字を発表する事に対する牽制機能が働くこと(私企業であれば、会計士による監査が入る上に、提供サービスが大きければそれだけ収入も多くなり、課税対象も多くなると考えられるので、水増しが発生しにくい。また顧客との契約関係もあるので、牽制機能が働く)

 

使える指標は何か?

 

こんなことを考えながら、新「李克強」指数の構成指標の一つを見つけました。日本の建設機械メーカー「小松製作所」が提供するコムトラックスです。

 

コムトラックスとは、同社が開発した建設機械の情報を遠隔で確認するためのシステムのことで、GPSにより稼働管理や位置情報の把握、遠隔操作も出来るというスグレモノ。

 

開発のきっかけは、90年代後半に盗まれた建機がATMの盗難に使われる事件の多発で、GPSを建機に搭載することで防犯に役立てようとしたとのこと。顧客の支払い不能の場合には遠隔操作で稼働を止めることが出来る上に、稼働時間を計測しているので、部品交換の適正時期を把握出来るなどメリットは大きい。同社はこのようにして計測した稼働データを集計し、ホームページで公表しています(参考文献2を参照)。

 

コムトラックスの特徴

この指標の特徴は以下の通り

  1. 速報性が極めて高い(2018年6月実績が7/6に発表される)
  2. 稼働時間の比較なので(販売台数比較ではない)、機械の余剰状態もちゃんと反映される
  3. 中国政府による統計への介入を排除出来る
  4. 地域毎に分けられて発表される(日本、北米、欧州、中国)ので、水平比較も可能

参考文献3のBloombergの記事でも評価されている中々面白い指標なのですが、あくまでコムトラックスは建設業界の動向だけを反映している指標で、製造業や小売業を反映していません。新『李克強指数』を見つけたいシリーズとして定例化して他の指標も探っていこうと思います。

 

《参考資料》

1.wikileaks 2007年3月15日付 駐中米国大使から本国あて電文

https://wikileaks.org/plusd/cables/07BEIJING1760_a.html

2.コムトラックス 2018年6月実績

https://home.komatsu/jp/ir/demand-orders/__icsFiles/afieldfile/2018/07/06/201806komtrax_j.pdf

3.Bloomberg記事 コムトラックスと統計との相関性

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-10-04/OX6DX96JIJUP01

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