欧州金融機関の中でも特に危機的状況にあるのが、欧州の盟主ドイツ最大の金融機関ドイツ銀行(Deutsche Bank)。
株価は?
NYSEの過去10年の株価は以下のチャートの通り。2008年のリーマンショック後よりも遥かに低い水準を推移中。ちなみにイギリスのバークレーズも比較対象に置いてみました。
ドイツ銀行(NYSE)
バークレーズ(NYSE)
現在のドイツ銀行の状況は?
- 2017年決算は3年連続の最終赤字
- 2018年FRBのストレステスト(健全性審査)に落第。大手行では唯一
- 世界的な業務見直し実施中(人員削減)
このようにドイツ銀行の業績には赤信号が灯っています。
ドイツ銀行不振の原因
ドイツ銀行不振の原因は以下の資料で分かりやすく纏まっています。
http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2017/2017win08web.pdf
要約すると以下の通り
- 住宅モーゲージ担保証券の不正販売を巡る訴訟で、米司法省に72億ドル支払を余儀なくされた
- 自己資本比率の水準に応じて利息が支払われる社債において、利息の支払可能性に疑義が生じた(その為、債券価格が下がり、資金調達が難しくなった)
- 元々のドイツ国内でのシェアの低さ
- 自己勘定取引業務の縮小傾向が業界全体としてあるも、スイスのUBSやクレディスイスの様に富裕層向け金融業務や、バークレーズの様に法人貸付やクレジットカードの等での強みがドイツ銀行には無かった
ドイツ銀行の主要株主は中国のあの会社
現在のドイツ銀行の主要株主は7.6%を保有している海航集団。1993年に設立された海南航空を主体とするグループで、中国では4大航空グループの内の一つ。中国の他の大手(中国国際航空、東方航空、南方航空)が国営企業から派生しているのとは異なり、海南航空は完全な民間企業。
同社はバブル期の日本企業を想起させるように脈絡無く海外の企業に投資を進め、過重債務の為、現在は経営危機に見舞われている。ちなみに同社はホテルチェーン・ヒルトンの株式も25%保有していたが、最近手放した模様。
その背後にはあの大物が…
そもそも国の規制が強い航空業界において1993年に創業した企業が何故わずか25年で大手航空会社の一角にまで成長したのだろうか?
海南航空の背後にいると言われているのが王岐山氏。現在の国家副主席。習近平氏とは文化大革命の下放の際に陝西省で出会った50年来の関係。同氏は政治局常務委員に入っていない(慣習上年齢制限に引っかかり入れない)為、現在序列8位だが、習氏の信任は特に厚いと言われている。同氏の親族が海航集団の経営に深く関わっていると言われているが、メディア検閲対象になっている為、詳細は不明。
海南集団にはもう一人の大物が…
実は海南集団を創業期から支えてきたとある世界的実業家がいるのですが、続きはVol2で紹介します。
《続く》